野鳥の名前  由来 と 語源 安部直哉 1

 ヤマケイ文庫の「野鳥の名前」という本を読む。雑学として流し読むのもいいのだが、せっかく バードウォッチングを趣味にしているので、気になったものを 備忘録として ここに記録しておく。

アオアシシギ
 足が青いから。そんなことよりシギそのものの由来が知りたいところ。別に調べてみたところ、鴫(しぎ)という 国字の訓読みがそのまま 鳥の名前になったということらしい。つまり 田んぼにいたような鳥がしぎ と呼ばれていたということなんでしょう。鷸、こちらは漢字体。英語ではsandpiper。
 どうやら 名前の由来には諸説あり。繁(しげ)、羽ばたきの音が大きいことから。
または くちばしが長いことからハシナガが由来との話もある。

アオサギ
 中国でも同じ感じで蒼鷺と書く。
 鷺の日本での呼び名は の由来は、白く美しい様子を示す さやけしによるとされる。
それの蒼いバージョンということでしょう。ミトサギ(水門鷺)という別名もある。昔から水辺をうろちょろしていたらしい。
 古代では白兎のことをサギと呼んでいたこともあるそうで、因幡のあれを加味し犯罪の名になっている説があるとか。明らかに漢字の読み方の説のほうが一般的でありましょう。horen

アオジ 青鵐
 鵐はしとどと読む。人とは ホオジロ 類の古い名前。青いホオジロ 類ということ。
 古事記に黒偏に京で黒京く(さく)という刑罰があり、それは目を の周りに刺青を入れること。その罪人の目の様子が、ホオジロ類のようだ と 例えられている。一時期の中島美嘉を彷彿とさせる。
 日本書紀に(巫鳥、これは芝苔苔という)という記述があり、しとと、と訓読みされている。古事記では斯登登、古語拾遺では志止止。
 著者はこれを、鳴声から聞きなしたのではないかと推測している。
 肝心のアオジの名は、鳥を表す 接尾語のジがあてられたものといわれている。
 繍眼児(メジロ)の目に刺繍したような羽毛のある小さな子という意味での漢字と同様のジであるのでは?とのこと。

アオバズク 青葉木兎
 夏鳥。青葉の季節に渡ってくるフクロウ類。
 ズクがフクロウの古語説あり。
 漢字の通りミミズクはうさぎに住む兎と思われていた。
 耳付くという説も。

アカエリヒレアシシギ 赤襟鰭脚鷸
 名は体を表す。夏羽 は 首が赤く、足は弁足な鷸。水面に浮く。北極圏で繁殖、南半球で越冬。

アカゲラ 赤啄木鳥
 キツツキ系の野鳥はゲラとつくものがほとんどであるが、その語源は「てらつつき」であるという。啄木鳥ーてらつつき(天良豆豆木)との記載が江戸時代の本朝食鑑にある。啄はついばむ、嘴でつつくの意。
 てらつつきのてらは取、虫を捕るという意味という説もある。
 もう一つ、テララララ…というキツツキのドラミングの音を聞きなしたという説もある。これは新井白石がて、けは囀声なりと東雅に記したもの。
 てらつつきという名前から、聖徳太子が建立し、曽我氏とともに物部氏の打倒を祈った天王寺に物部守屋の怨霊が数千万羽の啄木鳥となり、天王寺を破壊しようとしたが、聖徳太子が鷹に姿をかえ追い払ったという逸話があるそうだ。明らかに、後付けの仏教説話であるが、それはそれとして面白い。

アカコッコ 島赤腹
 おなかの赤い、コッコと鳴く鳥。ツグミ科。アカハラに似ている。伊豆諸島。島とは特定の地域に生息することを意味する。

アカショウビン 赤翡翠
 カワセミ科。 古事記ではカワセミがそにどりと呼ばれていた。そのソニがしょうびんに変化した説が一つ。
 室町時代にあいのうしょうにて少微との記載がある。語感は近いが、それが本当にアカショウビンを指しているのかは確実性に乏しいようだ。

アカハラ
 赤い腹のツグミ。アカハラツグミ。
 アカハラシナイとの呼び名もある。シナイ(シナヒ)とは定かではないが、作者はナヒはその行為をすることを意味し、シはシーシー鳴くからシナヒ鳥といった感じではなかろうかと推測している。
 私は、この作者は語源=鳴き声説が好きだなと感じているので、このシーについては疑念を感じている。

アカヒゲ 赤髭
 琉球地方。江戸時代の「飼籠鳥」(かいこどり)に記載。
 コマドリに似る。赤い毛(あかひけ)のコマドリを探せと使いを出したら、あかひげのコマドリと伝わった。
 

アジサシ 鯵刺
 鯵を突き刺して取る意味ではない。咥えてるので。
 さしは古語の鳥刺し。鳥もちを竿の先につけて振り回すあれ。鳥捕り。
 アジは一般的な魚を意味する。つまり、魚を捕る鳥。

アトリ 獦子鳥 花鶏
 集鳥(あっとり)。大きな群れを形成したことから。
 勢子とは狩猟において、獲物を追い立てる役割の人。大群で飛び立つさまがその様に見えたために、獦子鳥(せことり)の名がある。
 花鶏は見た目から。
 たくさんいた頃は、岐阜あたりで食用にされていた。カスミ網の禁止により食べられなくなった。世が世なら旅行鳩の様になっていたかもしれない。

アビ 阿比
 海鳥。冬鳥。語源はよくわかっていない。
 魚食み→ハミ→アビ、という変化説。
 江戸時代までアビとハムの区別はされていなかった。
 ハムは食む、が語源説。
 魚食みと魚食む。いいね。

アホウドリ 阿呆鳥 信天翁
 警戒心がなくすぐ捕まる、地上での動きが愚鈍であることから。
 信天翁も天を信じて飛ぶさまは見事だが、地上では爺様のようだという意味も含まれる。

アマサギ 亜麻鷺 飴鷺 猩猩鷺
 夏羽の頭部の飴色から。発音変化しアマサギへ。頭部の色が寄っているようにも見えるため、酒好き妖怪猩猩の名を借りたか。普通の人は呼ばないと思う。
egret

アマツバメ 雨燕
 雨が降ると急に現れたり、上がるといなくなったりしたから。
 ツバメは雨の前に低空を飛び餌を取る。湿気によるものとされているが、人目につきやすい低空に飴のタイミングで現れたのでしょうね。

アリスイ 蟻吸
 キツツキ科。アリを吸うから。正確には長い舌で絡め取っている。
 桜草公園でそれっぽいやつを見た気がする。

イカル 鵤 桑鳲。
 厳しい(いかめしい)様子からイカル。確かにちょっと怖い顔しているとは思う。文献 場 シメと呼ばれることもあるが、同科 別種の鳥。
 桑鳲はその大きなくちばしで桑の実を食べていたから。
 斑鳩と混同されがちだが、斑鳩はあくまで キジバト、もしくは数珠掛鳩や 鹿子鳩と聞いたこともある。

イスカ 交喙 交嘴 鵙
 くちばしが左右 噛み合わずに上下にずれていることから。古語の「いすかし(佷・的很)」は、「心がねじけている」「かたくなである」「みだりがましい」といった意味。
 個人的には イスカリオテのユダとの関連が気になる。偶然だと思うが 日ユ同祖論が思い浮かぶ。
 鵙の字が当てられることもあるようだが、百舌鳥の上のくちばしが下に伸びていること、アカモズという種類がいることを考慮すると、勘違いしたんだろうなあ という結論。
 いすくらし くじら。
 和歌に使われる 枕詞。いすくらし。
 くじらは鷹のこと。
 これも合わせて考えると、上のくちばし
が下側にグッと 曲がっている様子がいすかしと言われていたと 憶測できる。そういった 特徴を持つ 鳥に肉食のものが多いことも関係するのかもしれない。

イソヒヨドリ 磯鵯
 磯にいるヒヨドリ みたいな鳥。でもヒタキ科。

イヌワシ 犬鷲 狗鷲
 ワシの語源は、上空を旋回して輪を描くように飛ぶことから、ワ(曲)を為すもの。トビ などは 顕著。
 狗鷲、天狗のように森を舞うから。
 犬鷲。クマタカの黒い矢羽根は高級品。イヌワシの 茶色い矢羽根は下級品。クマには大きなもの 高貴なもの という意味もあるが、犬には逆に卑しいものという意味もある。

イワヒバリ 岩雲雀
 高山の岩場にいる ひばりみたいに鳴く鳥。イワヒバリ科の鳥。ひばりではない。

ウグイス 鶯
 万葉集にううくいすと鳴くとある。鳴き声の聞きなしからの名前。
 ホーホケキョ は、後に 仏教説話に取り込まれたからでしょう。今も昔も、浄土系 利益系仏教の勧誘手法はえげつないなと思う。

 ウズラ 鶉
 草むらにうずくまっているから。
 音読み だと シュン。昔はカエルが変化した鳥だと思われていた。

ウソ 鷽
 鳴き声、フィーフィー。口笛(うそぶき)に似ているためウソ。
 オスは顔が赤いのでてりうそ。
 メスは全体に灰色であまうそ。

ウトウ 善知鳥
 青森県浅虫の辺りにある善知鳥崎。そのほとりの善知鳥神社に由来するという説。祭神になっている。
 穴(うと)に住む鵜でウトウ説。
 穴や洞をうとというのは 秋田 、青森の方言。
 後者を支持したい。
 善知鳥安方忠義伝。

ウミアイサ 海秋沙
 万葉集に秋沙の記載あり。
 秋の早い時期にやってくる鴨。秋早鴨。
⋯アイサガモ。大言海。
 秋の間にやってくるかも。サは間、秋の頃の意。日本古語辞典。
 晩秋に渡来し越冬するから、秋が去る頃に来る鴨。秋去鴨⋯アイサガモ。語源辞典動物編。

 3者相応に説得力はあるが、観測地の緯度によるのでは?万葉の世にはどうだったか。万葉集7巻1122
山の際に 渡る秋沙の ゆきてゐむ
その河の瀬に 波立つなゆめ

ウミウ 海鵜
 鸕鷀(ろじ)が中国では鵜を指す。
 鵜は本来ペリカン類をしめす。
 作者は烏の音読みウが当てられたと見ている。黒いから。

ウミガラス 海烏
海にいるカラスみたいなやつ。お腹は白かったりする。
別名 のオロロン鳥は鳴き声から。
北海道にいるうちに見ておけばよかった。
 
ウミスズメ 海雀
 ウミガラス より小さい。スズメのように 茶色くはない。白黒 モノトーン。

ウミネコ 海猫
 海にいる猫みたいに鳴く鳥。
 言われてみれば 海馬、海豚、海鼠、海象と比べ、格段に 難易度が低い。

エゾセンニュウ 蝦夷仙入
 詳細不明。草の中を飛び回る様が、仙人のようだということらしい。
 個人的には、すぐ 草むらに入って見えなくなってしまうことを、仙界に飛び去ったというニュアンスで捉えて、幽玄の趣を匂わせたいところ。
 一度は見てみたい 可愛い鳥である。

エトピリカ 花魁鳥
 アイヌ語。エト、嘴。ピリカ、美しい。美しい くちばしの鳥。
 漢字の花魁鳥は、婚姻色の派手さから。
 ウミスズメ科。

エナガ 柄長
 男が 柄杓の柄のように長いから。
 可愛い。

オオジュリン 大寿林
 鳴き声のジュリーン。そんな風に鳴く鳥の大きい方。
 姿は似ているがコジュリンの方はジュリーンとは 鳴かない。

オオタカ 大鷹 蒼鷹
 大きい 鷹。背中の羽毛が蒼褐色なことにもよる別記載あり。
 和名抄 によると、色を問わず大きいものは皆、於保太加。小さいものは勢宇(せう)というそうだ。

オオハクチョウ 大白鳥
 見たまんま 大白鳥 なんですけど、古代には ククイ と呼ばれていた。くくひ。これは 鳴き声 に由来。

オオハシシギ 大嘴鷸
 見た目。

オオハム 大波武
 魚を食む大きな鳥。海鳥にて波。

オオマシコ 大猿子
 赤い顔が猿(ましら)に似ているから。他のマシコと比べて大きい。
 古語で猿のことをましらという。そっちの由来は分からない。

オオミズナギドリ 大水薙鳥
 水面をすれすれに切り払うように滑空する様から。草薙の剣 と同じ、刀剣を横に切り払うという意味の 薙ぐ。

オオヨシキリ 大葭切 大葦切
 一般的には 葦の茎に穴を開けて餌を取るから、と言われているが 著者は異を唱える。
 これはオオジュリンやツリスガラの習性で、オオヨシキリのものではないのだそうだ。
 よって、葦に限って営巣する、いつだって 葦のある場所にいる、葦限りが語源と主張している。
 行行子、葦原雀の異名もある。

オオルリ 大瑠璃
 羽が 瑠璃色でコルリより大きい。

オグロシギ 尾黒鷸
 尾が黒い。飛んでいる時によく目立つ。普段は隠れている。

オシドリ 鴛鴦
 雌雄相愛(を)し、から。をしどり。
 実際の生態はそんなことはない。
 ちなみに私はメスの色味が大好きである。目の隈取の辺りなんかもう 最高。

オジロワシ 尾白鷲
 わしは曲(わ)をなすもの。それの尾が白いやつ。
 大鷲の尾も白いのだけど、それよりは小さいんでしょう。
 オジロワシ は 褐色、オオワシは黒色。

オナガ オナガ
 そのまま 尾が長い。カラスの仲間。声が汚い。頭が帽子のように黒かったり、背中が鮮やかな水色だったり、色々 特徴はあるのだけれども、命名は オナガ。

オバシギ 姥鷸
 比較的 ふっくらとした体型で、動作が緩やかなことから、おばあちゃんみたいな鷸。
 赤褐色の羽が混ざり、ちょっとおしゃれな感じ もある。




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