紫陽花の次は

 納品先の雑貨店にて、手ぬぐいのディスプレイを横目に眺めるのが日課なのです。
 メインには二枚、季節のデザイン手ぬぐいが飾られます。3月梅、4月桜、5月藤、6月紫陽花。自然の中で、季節を感じることが難しくなった都市部の昨今。ここはちょっとしたオアシスです。
 
 さて、紫陽花の次はと楽しみにしておりましたら、全体に白っぽい手ぬぐいが飾られました。ぱっとみたところ植物のモチーフではないようですが⋯⋯。
 ラッコでした。あまりにも唐突。そして、季節モチーフと思い込んでいる私の脳が、事実を歪めます。いや、別にラッコはちゃんとラッコに見えています。が、夏の風物詩としてのラッコを夢想します。そうですね、夏は水族館でラッコを見ましょう。貝を割る音が、仕草が涼し気です。
 なにげにそれも間違っていない気もします。ですが、ラッコは北の海の生き物だったような記憶もありますし、いかがなものかと独り葛藤します。
 勢い余って調べてみますと、あれだけブームだったラッコは日本の水族館では鳥羽に2頭いるだけになっているのですと。ピーク時は100頭を超えていたそうなのですが。栄枯盛衰と言うには、あまりに身勝手なお話のようにも思いますが、ラッコたちは今は静かに暮らしているということでしょう。
 ちなみに、野生のラッコは北海道でも見ることができるのですってよ。夏は根室沖や霧多布岬がポイントで、約50頭のラッコが生息しています。
 ということは⋯ラッコは夏の季語で良いのではなかろうか。と、勝手に思いつきますが、ラッコは特に季語として設定されていません。通年見られるらしいです。まあ、水族館の水のイメージ、水属性に引っ張られての夏のイメージはある気もしますが、水族館も季語として認められておりません、あしからず。ここまで、すべて私のイメージでした。ですが正直、ラッコは結構夏かもしれませんよ。

 さて、そんなラッコの手ぬぐいから目を移しますと、ちょっとしたイベントワゴンが売り場に設置され、扇子や手ぬぐいなどの夏の手回りの品のコーナーが作られていました。そちらには、朝顔や花火をモチーフとした手ぬぐいが飾られています。何だい、こちらに出張中だったのですか。早とちりでラッコには悪いことをしてしまったような。
 7月朝顔、8月花火。これが手ぬぐい界の夏の季節感一軍なのでしょう。たしかにしっくりきます。ですが、ラッコ、そしてその隣に飾られた蕎麦猪口もちゃんと夏を想起させるものですね。このチョイスをなさった店員さんに称賛と尊敬を。ついでに夏の使者の称号を。

コメント