帰りがけにサイクルボール おしいち

 


 8月中旬、台風7号が関東沖をかすめながら、太平洋にぬけていく。ちょうどそのときに私は、宮城県石巻市の サイクルボール2024 おしいちに挑戦するか迷っていました。
 台風の接近で早々に豪雨の予感もしますし、それでもせっかく来たのですから予定通り走ってみたい気持ちもあります。もしかしたら台風は早々にはるか太平洋沖へと抜けるかもしれませんよ。
 はい、間を取ってショートコースを走ることにしましょう。ロングコースは3回走っていますし。
 ショートコースは60km強で石巻から奥松島まで往って来いのコースです。牡鹿半島とは逆方向です。新鮮。
 いつものかわべいの立体駐車場に車を入れて、11時30分に走行を開始します。幸い雨はまだ降っていません。予報では15時に降雨とのこと。あずましくはありませんが頑張りましょう。
 
 震災から月日が経ち、ぱっとみたところその傷跡はモニュメントとして残るのみのようにも見えます。防波堤は高さを増し、道路は広く舗装され、公園などが整備されこの景観を取り戻すには並々ならぬ努力があったことでしょう。チェックポイントにもなっているこの看板を見て襟を正します。
 そして、私は今後に備えるため近くのファミマで塩タブレットを買っておきます。
  牡鹿半島のコバルトラインを走るロングコースとは違いショートコースはどちらかというと街乗りの感覚が強いです。幹線道路を次のCPに向かって走っていますと、ついに雨が降ってきます。その勢いたるや、0から100。いきなりのフルパワー。さっきまで昼寝していた爺様がカンフーの達人でしたみたいな豪雨です。
 逆に気合を入れまして、全くあたりを見る余裕もなくヒイコラとペダルを踏んでいましたら、CP航空自衛隊正門を通り過ぎていました。6kmも。雨が小ぶりになるまで携帯を避難させていたことが全くの裏目。精神も体力も削られます。
 ゆっくり戻ると、銘菓ブルーインパルスの看板を掲げる和菓子屋さんを見つけます。ああ、あの有名なブルーインパルスがいらっしゃるところなのですね。先程は見逃していました。戻らなければしようがありませんでしたが、戻ったなりの発見はあったということでしょう。寄りませんが。
 さて、たどり着いた、そこは正門というか自衛隊の寮の入り口みたいな雰囲気で、仰々しいものを想像していた私の完全なるミス。目印にしていたのは電波塔のような見た目にも目立つ施設。cp3にしてすっかり疲れてしまいました。
 自転車にて初めての道、終わりのわからない峠の消耗の早さは異常です。そして無為の往復も。いつだ、どこだ、なぜだという心の片隅の不安が、脳のカロリーと酸素を大量に消費します。


 CP3の次は東松島市の宮戸島へ向かいます。CP4あおみなです。奥松島の観光の拠点であり道の駅のようなものらしいですね。遊覧船も不定期で出ているとか。
 途中で不意に海岸線が現れます。老眼に片足を突っ込んだ私には最後のほうが霞むぐらいには広いようです。波止の上が広く取られていたのでせっかくですからその天端を走ります。爽快。
 台風の影響でしょうか、海水浴場には人っ子一人おりません。やや荒れた高い波が海岸を洗っています。後に調べてみますと、客足が振るわず議会が2024年度から海水浴場としての開設を見送っているとのことでした。正直に思ったままをのべますと、海岸独り占めの穴場であるなと思いました。それだけに、誰が放置したのかわからない花火の燃え滓などに心が痛みます。
 まつしま、と言われるだけあって言われてみれば松が印象的な植生をしているのに気が付きます。名は体を表していたのですねぇ。岩場に生えた松の青さが引き立ちます。束の間リアス式海岸を突き抜ける道路の避けようのないアップダウンの苦痛を忘れさせてくれますね。
 CPあおみなにつきまして、記念にお土産を物色します。特産品とブルーインパルスのグッズが置いてありました。こういうときは日用品、手ぬぐいがちょうどいいなと探しましたが、あったのはハンドタオル。デザインも子供向けで、これは手が出ませんね。よって、日持ちのしそうな食べ物をチョイスします。名物であるらしいのりうどんのつゆ、ブルーインパルスカレー、ブルーインパルスかまぼこ。これらをハンドルバッグに詰め込み、周辺を散策します。海岸とは違い湾内は穏やか、ちょうど太陽が顔を出し、とても良い風情です。宮城オルレというトレッキングコースもここを起点に設定されているらしく、ちょっと興味をそそりますが、このあたりで次へ向かうことといたしましょう。実はここが折り返し地点。


東名運河


 CP震災復興伝承館。宮戸島から本土に戻って程なくのところにあります。震災から復興の記録が展示してあり、敷地内にざんぶと水をかぶったであろう旧野蒜駅がそのまま残されています。ちょうど展示してあった千羽鶴の展示方法が実見見事で見入ってしまいました。シンプルだけどクリアなアクリルはディスプレイケースとして優秀です。光らせ方もいい。
 ところで、この施設の前に川が流れているのですが、どうにも違和感を感じます。流れの方向が見えないというか、おかしいというか。海と並行なんじゃないのこれ?
 あとで調べてみましたら、これは東名運河といいまして成瀬川と松島湾をつなぎます。この後行く北上運河は旧北上川と成瀬川をつないでおり、二つ合わせて旧北上川と松島湾をつないでいるそうです。これらは明治14から17年ごろに作られたもので、野蒜に貿易港を作った際に活躍したそうです。今では釣り場とレジャーの為に使われているとのこと。面白そうなところがたくさんありますね、この辺りは。


 ぐっと石巻のほうに戻ってきて、今度のCPはJAいしのまき 四季彩館やもと。前情報でここはちょっとした産直で手作りの総菜が人気とうかがっておりました。そして私は、「補給はここで」と思って頑張ってきたのですが……。お盆期間中ですし、時間も昼時からこけています。お惣菜、一切なし。それはもうすがすがしい。サイクルジャージでの入店でいづらさを感じますが、ここで補給をしないことにはこの先が思いやられますので、甘酒、お茶、菓子袋に入った昔ながら系かりんとう饅頭を購入します。
 レジにて自転車の人?と話かけていただき、そうですと答えると、どこから?と。石巻を一周するラリーみたいなのをやっていますと伝えると、へえーと。あれ?ここチェックポイントになっていますよね?
 どうやらサイクルボールの皆さんはロングコースにばかり行っているのかもしれませんね。私は今回ショートの見どころの多さに驚いています。
 そして、ほかの場所のサイクルボールでもJA系の産直のチェックポイントはそのローカル感が魅力。今後とも協賛していただけたらうれしいなと。

石井閘門(マイターゲート)と北上運河

水の洞窟(運河資料館)

 最後のCPは石井閘門。北上運河の旧北上川との分岐点にあります。閘門ですから船が水位差をかわすための2つで一組の水門です。観音開きのマイターゲートがかっこいいですね。ここが明治期の海運と河川を使った水運をつないでいたのですかね。閘門のほかにも旧北上川側には石井水門があり、水門としては珍しくマイターゲートが採用されています。現代的で大きくステンレスが輝いています。稼働は油圧式。マイターゲートになった理由は閘門と合わせて船を通しやすいようにですかね。

 ここでちょっと豆知識。
 ・世界最大の閘門は諸説あり。そもそも何をもって最大とするかによるそうです。幅?高さ?閘室の大きさ?検索するとアントワープ港のブレンドレヒトロックやキールドレヒトロックが出てきます。オランダの北海運河のアイマイデン閘門群の海門も名前が出ます。2022に完成したアイマイデン海門は表面積が最大、キールドレヒトロックは高さが27mで3メートル高いため水容量が最大らしい。

 ・パナマ運河の幅はおよそ33.5mでパナマックスと呼ばれる。船舶を設計する際の一つの基準になっている。今はニューパナマックス、新パナマ運河を通ることができる船の幅は49m、長さ366m、高さ57.91m。
 ・毛馬閘門はローラーゲート式。
 ・閘門は一般的にはマイターゲートである。建設コスト、管理の簡単さがメリットであるらしい。

 石井閘門の近くに水の洞窟という北北上・南北上・東名運河の資料館があります。なんだかおもしろい建物で、内部も傾斜した半円形の通路で構成されています。その壁面に展示がされており、弦の部分が日当たりのよい休憩スペースになっており、奇抜なだけではない考えられた構造のように思います。近未来的だ。かの有名な隅健吾氏の設計とか。

北上運河沿いの蓮


唐突なサイボーグの火を吹く禿

シアターキネマティカ

このロゴの自販機がどんな田舎にもあって結構助かる


石ノ森漫画館

 この後はスタート地点のかわべいにもどるだけです。やっとです。この時点で15時を過ぎていますが、昼頃のにわか雨が嘘のような天気です。
 正規のルートは旧北上川沿いにサイクリングロードを走るのですが、私はなるべく北上運河沿いに走りたかったので運河沿いに走ります。農業排水路である嘉右衛門堀との合流点を見たり、蓮の花に目を奪われたりこちらもいいルートでしたね。距離も若干短いし。
 ほどほどで運河を離れ、石巻の市街を走ります。石ノ森章太郎がモチーフのオブジェが至る所にあるので、私は今回はライダーとサイボーグ007に行き当たりました。オブジェ巡りだけでも楽しかろうよ。石巻はアート方面にも力を入れているのだねぇ。
 私はアートより食い気、無事完走してかわべいで石巻焼きそばをお土産に購入。
 走行距離は60㎞超。時間的には予定より1時間ほど過ぎましたでしょうか。今回は知らない町を歩けて楽しかったという感じですかね。
 さて、JA石巻で買っておいた駄菓子系かりんとう饅頭をぱくつきながら、埼玉までの車移動を頑張ることにします。おもしろかった。来年もまたこれたらいいのだが。

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